トダの想い

伝統を絶やさぬ努力

この地は古代より伝わる鍛冶の神「天目一箇命(あめのまひとつのかみ)」のゆかりの地であり、鍛冶・打ち刃物の本場として、代々その技術を受け継いでまいりました。
三木の打ち刃物はその中でも「鋸(のこぎり)」、「鉋(かんな)」、「のみ」、「小刀」等の大工道具を主に手がけ、全国の職人さんにご愛用いただいております。
これらは職人の手により丁寧に叩き、鍛え上げられ、その刃に適度な柔軟さと強靭さを併せ持つように工夫されます。
この江戸時代より続く伝統的な製法は国の「伝統工芸品」として認定を受けており、それを受け継ぐ我々はその伝統を絶やさぬよう、また後世に広く知らしめる為努力しております。

本物の価値を伝えたい

最近は外国からの製品が安く手に入ったりなどで、伝統技法で作られた国産の良質な道具がそのシェアを奪われてきました。
「種類が豊富」で、「値段が安い」、また製品的に「”ブランド志向”が薄い」というのも理由のひとつです。
昔と違い、今は郊外のホームセンターなどで手軽に格安の大工道具が手に入りますので、ひとつひとつの道具にこだわる必要がなくなってきたという事でしょう。
そのようなご時勢で、なぜ私たちは「播州三木打刃物」にこだわり続けるのか・・・?
それは、この道具そのものの質や完成度にとどまらず、製法や技法までもが、代々受け継がれてきた貴重な”財産”だからです。
私たちが手がける「播州三木打刃物」とはその名が示すとおり”打ち刃物”と呼ばれるものです。
これは、ステンレス板を型で打ち抜いて研いだだけのものとは違い、鉄や鋼を組み合わせ、曲げ、そして叩き、鍛え、道具として完成させた芸術品といえます。
こうして出来た刃物は耐久性に強く、手入れをすることで非常に長い年月の間使い続けることができます。
鉄は硬いだけではモロく、衝撃に対して弱いため、それだけでは用をなしません。

かといって柔軟さだけでも木に負けることなくしっかりと捕らえる強さが得られないため、道具としては不十分です。
戦国時代から江戸時代にかけて、大工鍛冶の職人たちが極めてきた技術はその両者を併せ持つ最高の道具を生み出し、それを伝えてきました。
こういったいわば「武人の蛮用」に耐えるホンモノの道具は、これら伝統技法によりはじめて完成するのです。
「刃が欠ければ、次のを買えばいい」
それもいいでしょう。
しかし、大工職人さんにとってホンモノの道具を手に入れていただく事は、「自分の仕事に対する誇りのひとつ」であると私たちは考えています。
まずは、お手持ちの道具の中から”ひとつだけ”持ち替えてみてください。
その重量感と仕上がりの高さに、貴方の”仕事へのプライド”を強く刺激することでしょう。